2013年3月1日金曜日

いまさらのレーダー照射問題での中国国防省反論:その’意味するものは




 ハッカー戦争、北朝鮮の核実験と次ぎから次へとイベントがあった。
 ために、レーザー問題はあっという間に過去のものになってしまった。
 そんな中でのレーザー照射の中国国防省反論ではほとんどインパクトがない。
 時期はずれ、賞味期限切れ、と言った感じがある。
 客観的にみて、この問題での政府外交部と国防部との意思の疎通がアヤフヤである。
 どうも、共産党の解放軍へのコントロールが効かなくなっている、というのが一番の問題のように思える。
 形を繕うために、意図的に記者に質問させて、それに答える形で国防部の意見を述べた、といッた雰囲気がある。
 やらせで、とりあえず形式を整えただけのものだろうが、あまりにも時間が経ちすぎている。


レコードチャイナ 配信日時:2013年3月1日 7時0分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=69873&type=0

「日本側の追跡・妨害の証拠ある」レーダー照射問題で中国国防省反論―中国

 2013年2月28日、中国国防部ウェブサイトによると、国防部の耿雁生(グン・イエンション)報道官は2013年最初の定例記者会見で、中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への火器管制レーダー照射問題に関連して、
 「中国の艦艇及び航空機に対する日本側の追跡監視や妨害の証拠を把握しており、相応の措置を取る権利を留保する」
と述べた。28日付で中国新聞網が伝えた。

記者会見では以下の質問が上がった。

 火器管制レーダーを照射したとの日本メディアの指摘に対し、中国国防部は「事実と異なる」と反論したが、日本側は「中国側の説明はまったく受け入れられない」と返答した。
 このことに関する中国軍当局の意見は?
 また、度重なる日本の追跡監視や妨害行為を中国軍当局はどのように見ているか。

 日本メディアの指摘について、耿報道官は
 「中国側は既に意見を発表し、中国軍当局の厳正な立場を表明している。
 日本側の説明は全く事実に合致しない。
 日本側は『火器管制レーダーの照射』という問題をでっち上げることで、中国軍の名誉を傷つけることを企んでいる。
 更には当該地域の情勢を緊迫させ、国際世論を誤った方向に導く目論見がある。国際社会は、日本のこういった動きに十分に警戒するべきだ」
と指摘した。

 また、耿報道官は
 「日本側の至近距離からの追跡監視や妨害によって、中国の艦艇及び航空機の安全が脅かされていることが、中日の海上安全問題の根源である。
 中国軍当局には十分な証拠があり、相応の措置を取る権利がある」
と述べ、
 「中国の艦艇及び航空機に対する日本側の追跡監視の状況は全て掌握下にある」
と強調した。



朝日新聞 2013年3月1日0時46分
http://www.asahi.com/international/update/0301/TKY201302280550.html

中国国防省「威嚇受けたのは中国」 レーダー照射問題で

 【北京=奥寺淳】中国国防省の耿雁生報道官は28日の会見で、中国軍の軍艦による日本の護衛艦への射撃用レーダー照射を改めて否定した上で、
 「日本側が中国の艦船や航空機に近距離から監視し、妨害していることが根本的な問題だ。
 相応の措置を取る権利を保留する」
と対抗手段もちらつかせて牽制(けんせい)した。

 耿報道官は
 「以前から、日本側が近距離から中国の艦船や飛行機を追跡している証拠がある」
と述べ、威嚇を受けているのは中国側だと反論。
 さらに
 「日本の指導者がしばしば挑発的な言論を発し、中国が脅威だと大げさに言って軍事的な対抗意識をあおっている」
とも批判した。
 ただ、
 「海上での偶発的な事件は望んでいない」
とも述べ、日本が尖閣諸島の問題で解決策を示すなど関係改善の条件を整えるよう求めた。

 国営の中国中央テレビも同日、中国軍艦が射撃用レーダーを照射した記録がコンピューター上に残っていなかったとし、中国側の正当性を強調している。



JB Press 2013.03.01(金)  阿部 純一:
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/37239

中国は「レーダー包囲網」に監視されている
日本とアメリカ、台湾がミサイル情報を収集

 安倍晋三総理の訪米が成功裏に終わった。
 安倍総理は首脳会談後の共同記者会見で、
 「日米同盟の具体的な政策においても、方向性においても完全に一致することができた。
 日米同盟の信頼、強い絆は完全に復活したと自信を持って宣言したい」
と述べ、日米同盟の復活と深化という懸案が達成されたことを明確にした。

 この日米首脳会談の成果の1つとして、京都府京丹後市の航空自衛隊・経ヶ岬分屯基地に米軍の早期警戒レーダー「Xバンドレーダー」を追加配備する方針が打ち出された。
 これが実現すれば、青森県つがる市の空自・車力分屯基地に次いで国内2カ所目となる。

 経ヶ岬へのレーダー配置は、北朝鮮がグアム方面にミサイルを飛翔させる場合の探知・追尾を主眼としているが、東京など首都圏をめがけたミサイル発射の警戒も担うことになる。
 車力分屯基地のレーダーは主に米本土を標的とするミサイルの探知・追尾を目的としており、経ヶ岬のレーダーと役割が分担される。

■朝鮮半島をカバーし、中国の弾道ミサイルも探知

 実は、2カ所目のXバンドレーダーの設置を巡っては紆余曲折がある。
 2012年8月の「ウォールストリート・ジャーナル」の記事では、沖縄が候補に挙げられていた。
 9月にはパネッタ国防長官(当時)が来日し、米国から調査チームを派遣することが伝えられ、中国を刺激することを避ける意味合いを含め、「沖縄以外の日本の南部」ということで日本海側の適地を探っていた。

 パネッタ長官に同行した米高官は
 「レーダーは中国に対する防衛用のものではない」
ことを指摘しつつ、北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対抗するものであることを強調していた。
 経ヶ岬分屯基地は、北朝鮮を睨む位置としてまさに「適地」であろう。

 経ヶ岬に実際に配備されるレーダーは、車載移動式のXバンドレーダー「AN/TPY-2」で、車力分屯基地に配備されたものと同じとされる。
 その有効探知範囲は約1000キロメートルとされるが、1平方メートル級の目標なら、探知可能な範囲は約2300キロメートルにも及ぶ。
 ということは、 1000キロメートルなら朝鮮半島全域がカバーされ、2300キロメートルなら中国の北部沿岸地帯もカバーされることになる。

 仮に1000キロメートルであるとしても、中朝国境の北部、吉林省・通化がギリギリ含まれる。
 通化には、中国が日本を標的に配備している「東風 21」など中距離弾道ミサイルの基地がある。
 北朝鮮の弾道ミサイルに対する警戒が主眼であるとしても、
 経ヶ岬のレーダーは中国の弾道ミサイルも探知・補足し得るのである。

 このレーダーの情報は、イージス艦とデータリンクされており、イージス艦が日本海にいなくても、迎撃可能な場所にいさえすればスタンダードミサイル「SM-3」で迎撃が可能とされる。

 補足すれば、航空自衛隊も独自に早期警戒レーダーを展開している。
 通称「ガメラレーダー」と呼ばれるLバンドレーダー「J/FPS-5」が、新潟県・佐渡分屯基地、鹿児島県・下甑島分屯基地、沖縄県・与座岳分屯基地にそれぞれ配備されている。
 探知距離は約1200キロメートルで弾道ミサイル、巡航ミサイルの追尾が可能だという。

 言うなれば、日本海全域、東シナ海、黄海はこれらレーダーの守備範囲に入っているというわけである。

■台湾が米国から購入した早期警戒レーダー

 ところで、経ヶ岬に配備されるXバンドレーダーは、レーダー施設としては輸送機で運搬可能な小規模なものである。
 それとは対照的な、大がかりなレーダーが台湾で2013年2月から稼働を開始している。
 それが台湾の北部、新竹県楽山の山頂(標高2660メートル)に設置された長距離早期警戒レーダーである。

 探知範囲は約5000キロメートルに及び、ほぼ中国全土をカバーするばかりか、南シナ海、朝鮮半島、日本全域をもカバーする
 2012年12月の北朝鮮による「衛星打ち上げ」も、試験稼働中だったこのレーダーはしっかり探知・追尾に成功している。

 1995年夏と96年春に、中国が台湾近海に向けて弾道ミサイル演習を実施した。
 このとき、台湾はミサイルを探知・追尾できるレーダーを持っていなかった。
 そこで米国から早期警戒レーダーを購入するという話になった。

 だが、ここから話がややこしくなる。 
 2000年代に入って、レイセオン社の「AN/FPS-115 Pave Paws型レーダー」か、それともロッキード・マーチン社の「LM デジタルUHF型レーダー」か、という選択肢が提示されたのだが、台湾がその選択を絞りこまないまま、2004年3月 30日に米国防総省は議会に対し、総額18億ドルに上る早期警戒レーダー2基の売却計画を通知した。

 台湾が米国との契約締結をためらううちに、2005年春にはロッキード・マーチンが手を引き、結局2005年6月にレイセオンが台湾と総額7億 5200万ドルで早期警戒レーダー1基を2009年9月までに建設する契約を結んだ(2007年には台湾が留保していた米国からの2基目のレーダー建設のオファーを拒絶している)。

 このレーダー建設は、その後の工事の遅延や機材の値上げ等、台湾と米国との間で摩擦が絶えなかったが、結局13億8000万ドルをかけて2013年2月、ようやく正式に稼働するところまで来た。
 当初の構想から数えれば10年以上かかったことになり、
 その間、中国の台湾向け弾道ミサイルの戦力規模は増強が続き、現在では1400基以上と見積もられている。

■レーダー情報の共有が米台の「非公式同盟」を強化する

 中国の戦術弾道ミサイルが発射され台湾に到達するのに10分もかからない現実を考えれば、台湾の防衛にとって、このレーダーができたことによる防衛上のメリットは乏しいと言わざるを得ない。
 台湾有事の際に中国が真っ先に潰しにかかるのがこのレーダーだとすれば、台湾はただでさえ数の少ない「パトリオット PAC-3」迎撃ミサイルを、このレーダーを守るために振り向けなければならない。
 そうであるとするならば、台湾にとってこのレーダーは無用の長物のようにも見える。

 しかし、もちろん台湾側の了解が前提になるが、このレーダーの情報を米軍が共有するとなれば話は違ってくる。
 というよりも、これはもともと米国が台湾にパトリオットPAC-3を供与する時点から始まっている話であり、この早期警戒レーダーも同じ文脈にある。
 台湾のミサイル防衛も、米国の早期警戒衛星によるデータとリンクすることで機能する。台湾の早期警戒レーダーがそれを補完する位置づけであるとすれば、米軍とのデータリンクは織り込み済みとも言える。

 言うまでもないが、台湾と米国には国交がない。
 しかし、米国内法である「台湾関係法」で、米国は台湾の安全保障にコミットしている。
 早期警戒レーダーの情報共有は、国交のない米台の「非公式同盟」を強化するものとなる。
 そう考えれば、極めて高価な早期警戒レーダーも台湾にとって十分に引き合う投資と言えるだろう。

 中国海軍フリゲートによる海自護衛艦やヘリへの火器管制レーダー照射が注目されたが、
 中国自体が、周辺海域を含めて米国を中心に日本、台湾のレーダーで監視される状況になっていることをどこまで自覚しているのだろうか。

 中国の国防戦略の核心は
 「情報化条件下における局地戦争に勝利する」
こととされている。
 だが、「情報化」については、
 中国が逆に「レーダー包囲網」に直面している事実を認識しなければならない。





【中国海軍射撃用レーダー照射】


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