●図1: 欧州通貨制度(EMs)と金融危機の発生による資金の流れ 黒線―EMsへの資金流入(GDP、LHSに対する%)、青線―金融ストレス下でのEMsの資金(RHS) 出典:国際通貨基金(IMF)、キャピタル・エコノミクス
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IB Times 2013年3月4日 11時56分 更新 記者:MORAN ZHANG 翻訳者: 加藤仁美
http://jp.ibtimes.com/articles/41298/20130304/924868.htm
通貨戦争:日本の円安で世界経済に痛みが走る
米ドル、韓国ウォン、ユーロが反撃
日本の政治家たちは認めないだろう。しかし日本は静かに通貨戦争を世界に宣言した。
20年以上におよぶ景気低迷を味わい、過去8四半期のうち6四半期の国内総生産(GDP)がマイナス成長を遂げた日本は、自国通貨を武器として使用する決定を下した。
他国が景気回復の代償を支払うよう期待してのことだ。
結果、昨年11月中旬以降、日本の円は対ドル15%、対ユーロ16%の下落となった。
危険な戦略だ。
多くの場合、通貨下落は国内景気減退と経済成長のチャンスに自信をなくしたというサインである。
日本は長年にわたり、デフレに苦しんできた。
過去6か月間、賃金と物価は下落している。
日本には通貨の著しい下落以外にいくつか選択肢があるはずだ。
GDPを持ち上げるために時間をかけて、政府の景気刺激策や事業者ローンを活用するために多くの資金を集め、日本の国債利回りを上昇させるべきである。
為替相場戦略は、長期的に日本を助けるかもしれない。
しかし、他国は酷い計画を実行しないようにして欲しいと考えている。
日本の動向が日本の同盟国や近隣諸国の景気を顕著に減退させれば、直ちに通貨戦争を激化させることになるだろう。
「通貨操作は一国の利益が他国の損失となるゼロサムゲームである」
と、バブソン大学で経済学と金融学の講師を務めるフレデリック・シャルティエ氏(Frederic Chartier)は述べた。
■戦いは既に始まっている
世界経済で何らかの兆候がささやかれる場合、それは既に始まっているという意味だ。
2月5日、フランソワ・オランド仏大統領(Francois Hollande)はユーロの価格コントロールの一助として「中期為替相場」目標を設定するようにユーロ圏各国に要請した。
「われわれは自国の利益を守るため、国際的なレベルで行動する必要がある」
とオランド大統領は述べた。
先月、欧州中央銀行(ECB)のマリオ・ドラギ氏(Mario Draghi)総裁は金融緩和姿勢を維持すると述べ、ユーロ高により経済成長が阻害される可能性があるとの懸念を示した。
アジアでは韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領が、円の急落により、韓国企業に厳しい影響が出ているとした。
韓国政府はウォンの安定性を確保するために、先制かつ効果的な措置を取ると述べた。
「韓国企業の損失を避けるために先制行動を取る」
と朴大統領は2月20日、地元ビジネスリーダーとの会合で述べた。
タイでは、キティラット・ナ・ラノン・タイ副首相兼商務相(H.E.Mr. Kittirat Na Ranong)が輸出業者を支援し、過去3か月でバーツを対円で16%押し上げた資本流入を阻止するため、金利を引き下げるよう中央銀行に圧力をかけた。
このような強気の姿勢による対応は、
中国人民元と米ドル両方の継続的な脆弱さに影響を与える。
両国は世界経済の中の自然な流れであり悪意によるものではないと主張する。
しかし、異なる意見を述べるエコノミストも多い。
5年前に景気後退が始まって以来、米国の政策はドルを荒々しく扱ってきた。
例えば、米連邦準備制度理事会(FRB)が事実上ゼロに金利を引き下げたり、量的緩和プログラムで国債を買うために紙幣を増刷したのが、それにあたる。
■大きな困難
国が強い態度で既に進行中の通貨価値下落をエスカレートさせる場合、
世界経済へのダメージは、先進国と新興国双方に災厄をもたらしかねない。
かつて、金融保護主義が保護貿易主義を発生させ、1930年代に貿易の世界的なメルトダウンの危機をもたらした。
それは第二次世界大戦へと繋がった。
現在の米国では、七面鳥の一般的関税率は6.4%、クラムジュースは8.5%、マグロの缶詰は35%である。
牛乳、チーズ、砂糖、エタノール、タバコ、繊維にも、実質的な輸入障壁がある。
米国国際貿易委員会のプロジェクトは、米国が1度にすべての重要な輸入規制を自由化した場合、同国のGDPは22億ドル(約0.01%)増加し、輸入は115億ドル(約0.42%)増加し、輸出は90億ドル(約0.04%)増加するとしている。
通貨戦争に端を発した通貨価値の急激な変動は、重要な原料のコストや、製品を海外に販売して発生する収益の予測や計画を困難にし、投資力を削いでいる。
韓国では2012年10月-12月のウォン高が大手自動車メーカー、起亜自動車(きあじどうしゃ)の営業利益51%減の直接的な原因となった。
起亜自動車は同国第2位の自動車メーカーであるが、2013年の売上成長目標を引き下げた。
同社の海外売上高は同社の総売上高の80%以上を占める。
「為替レートが制御不能だ」
と、起亜自動車のチーフ・オペレーティング・オフィサー、トーマス・オー氏(Thomas Oh)は述べた。
米ウォール・ストリート・ジャーナル紙によると、オー氏は
「ウォンが上昇し続けるなら、われわれはコスト削減のために最大限の努力をしなければならない」
と述べたという。
韓国の輸出の伸びは、今年に入り、実際には停止している。
一方で、日本の輸出は今年1月、過去8か月間で最高に達した。
日本と韓国、2つのライバル国の状況が逆転した。
世界の通貨戦争の背後で、さらに重要な問題が発生している。
それは、先進国の為替レートの下落により、新興国に急激で不安定な資本流入が生じていることだ。
このような欧米諸国からの資金流入を、ブラジルのジルマ・ルセフ大統領(Dilma Rousseff)は
「安いお金が津波のように流入している」
と述べた。
そしてこれは株と国債の交換といったように新興国の資産市場を増大させるだけでなく、インフレのコントロールも困難にしている。
輸出と成長力を弱めて、新興市場通貨に容認しがたい大きな圧力をかけている。
ブラジルのような発展途上国にとって
「その結果は、レバレッジの危険な引き上げと、最終的に持続不可能となる財源の消費だ」
とロンドンのキャピタル・エコノミクスのチーフ新興市場担当のエコノミスト、ニール・シャーリング氏(Neil Shearing)は述べている。
昨年のブラジル経済の成長率は、前年比わずか1%増と推定される。
2011年は同2.7%増、2010年は7.5%増であった。
一方でラテンアメリカのインフレの上昇ペースは今年1月に過去8年間でほぼ最速の月間ペースで上昇した。
ブラジルが景気停滞下のインフレーションである「スタグフレーション」に向かってスライドしたと懸念される。
ブラジルの2013年1月の消費者物価指数は前年比6.15%だ。
これは中央銀行の目標範囲の上限に近い。
高インフレ国が自国経済にダメージを与えず持続的に自国通貨を希薄化することはできない。
タフツ大学フレッチャー法律外交大学院教授のローラン・ジャック氏(Laurent Jacque)は、ブラジルで悲惨な状況が続いていると指摘した上で、今後の為替レートへの影響について
「通貨戦争というよりも、どん底へのレースだ」
と語った。
1930年代初頭にも本格的な通貨戦争はあった。
1930年から1938年までに20か国が少なくとも1度は10%以上、自国通貨を切り下げた。
フランス、ギリシャ、スペインなどでは1923年から1938年の間に5回以上通貨切り下げを実施した。
連続的な切り下げは、この頃発生した大不況と高い貿易関税の悪循環が原因であった。
例えば米国の1930年関税法である。
この法律はスムート・ホーリー関税としても知られており、米国が1930年6月17日に成立した関税に関する法律で、2万品目以上の輸入品に関する米国の関税を記録的な高さに引き上げた。
しかし、多くの国が米国の商品に高い関税率をかけて報復し、米国の輸出入は半分以下に落ち込んだ。
一部の経済学者は、この関税法が大恐慌の深刻さを拡大したと主張している。
1932年まで米国の輸入品に対する関税率は平均59.1%だった。
1830年以来、米国で最も高い関税率なのが粗糖である。
1913年に1ポンド(454グラム)当たり1.26セントだった関税が、1930年には1ポンド当たり2.5セントまで上昇した。
「これは近隣諸国を窮乏化するやり方だ。
だからこれは解決策ではない」
と国際的な通過システムの専門家でベルギーのテラグローバル財団会長のバーナード A. リエター氏(Bernard Lietaer)は述べた。
■日本は成長への道を示せるのか?
新たに就任した安倍晋三総理は、成長への道を示せると考えているようだ。
昨年12月の選挙で安倍氏が勝利した後、日銀は金融政策決定会合でデフレ脱却に向け2%の物価安定目標の採用を決定させるとともに、2014年から期限を定めずに資産買い入れを行う「無期限(オープンエンド)型」の新たな金融緩和強化策を打ち出した。
総理が瀕死の日本経済を刺激するために決意した方針だ。
円安による迅速な結果を日本は期待すべきではない、と経済学者は言う。
しかし、米国主導の自由貿易協定に関する協議に参加することにより日本経済を開放するためには、これは安倍政権にとって他の改革を推し進めるために必要な一歩なのかもしれない。
安倍首相は2月22日にワシントンD.C.でバラク・オバマ大統領(Barack Obama)との初会談後、記者会見を行った。
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉に関
し「会談で聖域なき関税撤廃が前提ではないことが明確になった」
と指摘し
「なるべく早い段階で決断したい」
と述べ、TPPの交渉参加を事実上表明した。
安倍首相は28日の施政方針演説で、TPPに関連し
「国益にかなう経済連携を進める」
と訴えた。
ただ、TPPによる安価な海外製品の流入で農家は収入が大幅に落ち込むことも予想されるため、政府は激変緩和措置の検討に入る。
首相は3月上旬で調整しているTPP交渉参加の表明に合わせ、財政支援など農業保護策の検討を関係各省に指示する方針だ。
財政支援の対象となるのは、TPPによる市場開放でコスト削減を進めても安い輸入品に価格面で太刀打ちできず収入の大幅減少が見込まれる農家だ。
具体的な支援内容は、TPP交渉妥結後に自由化される品目や価格差などを精査して決定する。
あらかじめ制度の枠組みを固めることで、農家の懸念を払拭する狙いがある。
安倍政権は「攻めの農林水産業」として、農産品の海外輸出や、法人経営・大規模経営化などを進める方針を表明している。
こうした競争力強化に加え、保護策の検討を参加表明のパッケージにすることで、自民党内の反対派や農業団体から理解を得たい考えだ。
「金融政策は日本経済を動かす最初の重要項目だ」
と、カナダ・アルバータ州に拠点を構える国際送金サービスの大手ウェスタン・ユニオン・ビジネス・ソリューションズ(WUBS)のシニアマーケットストラテジスト、カール・スカモッタ氏(Karl Schamotta)は述べた。
HSBCの日本経済専門家エコノミストのイズミ・ディバリエル氏(Izumi Devalier)によると、
円が対ドルで10%低下することにより、日本のGDPは0.6%押し上げられる可能性があるという。
企業収益の復活が賃金割り増しに至るかもしれない。
●図13: 円安が6か月後に賃金上昇に到る可能性(%,対前年比) 赤線―全給与(全産業)、青線―実行為替レート(6か月後) 出典:日本銀行、厚生労働省
賃金の円安の影響は、期間によって異なる。
円は2012年11月(グラフ中の点線)以来、前年比10%以上下落している。
このことから、メリルリンチ日本証券チーフエコノミスト吉川雅之氏によると、
賃金が今年下半期に増加し始める可能性はある。
しかし急激な円安は、日本に期待するような利益をもたらさないかもしれない。
日本の燃料の海外資源への依存度が高まっているからだ。
エネルギーの輸入は(2010年までの34%から)2012年には総輸入額の47%を占めている。
貿易赤字は2012年に6兆9000万円に膨れあがった。
これは貿易収支がマイナスに陥った過去2年間で最悪の記録だ。
「通常、円の下落は日本に利益をもたらすとされてきた。
しかしエネルギー資源の輸入などにより、もはやそうならないかもしれない。
結果として貿易赤字となるだろう」
とノースウッド大学国際ビジネス学科教授ジェイ・P・チャンドラン氏(Jay P. Chandran)が述べた。
日本は積極的な為替相場政策を行い、その結果を待っている間に、既に通貨戦争に参加している他国が思いもよらない結果に陥ってしまうことを見てきたはずだ。
「米国が金融政策の量的緩和に対応しないと、現在のヨーロッパのような財政危機に陥ってしまうのではないか」
とタフツ大学のローラン・ジャック氏は述べた。
継続的に通貨が上昇していくと、結果として破綻を招く。
「最悪のケースは、このどん底へのレースが激化し続けて、現在の金融システムが崩壊することだ」
とエバーバンク・ワールド・マーケッツ社長チャック・バトラー氏(Chuck Butler)は語った。
「それ以外の選択肢は、誰もが後退することに合意することだ。
国際通貨基金(IMF)がおそらく段階的に介入し破綻に到りそうな国にいくつかの支援策を提供する。
そうすれば貨幣価値の引き下げを継続する必要はない」
とバトラー氏は言う。
問題は世界経済がぐらついていることだ。
日本政府が夏の参議院選挙に勝利するため有権者向けの性急な結果を出そうとすると、問題はさらに困難になるだろう。
そして国際協力も不備となる傾向になるのではないだろうか。
この記事は、米国版 International Business Times の記事を日本向けに抄訳したものです。
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人民日報から。
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レコードチャイナ 配信日時:2013年3月5日 6時20分
http://www.recordchina.co.jp/group.php?groupid=69991&type=0
金融緩和で日本円が苦境から脱するのは難しい―中国メディア
●4日、中国メディアは金融緩和で日本円が苦境から脱するのは難しいと指摘した。資料写真。
2013年3月4日、日本銀行(中央銀行)の次期総裁人事案で候補に挙がったアジア開発銀行(ADB)の黒田東彦総裁は、今月中旬にも日銀総裁に就任する見込みだ。
黒田氏は安倍晋三首相の打ち出す金融緩和政策を強く推しており、就任後は無制限の資産買い入れを承諾し、2%のインフレ目標を達成するとみられる。
こうしたことから、外界は日本政府の今回の人事を、脱デフレの戦いが次の段階に進むシグナルと理解する。
人民日報が伝えた。
今回の人事案の情報が伝わると、日本国債の基準金利は約11カ月ぶりの低い水準となり、5年満期国債の金利も過去最低を更新した。
ここから日本政府が今後さらに緩和された金融政策を採ることへの市場の期待がうかがえる。
安倍首相はかねてより、日本経済の長期的な低迷の主因は日銀が慎重過ぎる金融政策を採ってきたことにあるとの見方を示しており、首相に再び就任すると日銀に圧力をかけ、インフレ目標をそれまでの1%から2%に引き上げると同時に、無制限の資産買い入れ計画を打ち出し、消費と投資を促進し、日本経済の底上げを図ろうとした。
短期的にみれば、こうした政策はある程度は期待通りの成果を上げており、今年に入ってから円の対ドルレートは7.7%値下がりし、日経平均株価は12%上昇した。
これまでに明らかになった情報によると、日銀の2人の副総裁の候補も、黒田氏と同じく金融緩和政策の支持者だ。
よって日銀は新たなトップの就任により、米国や欧州の中央銀行の後を追って、経済に新たな大量の流動性を注入し、金融機関が企業や消費者への貸し出しを一層増やすよう促進して、日本経済の復興を図ろうとするとみられる。
2008年に国際金融危機が発生すると、米国と欧州連合(EU)はさまざまな量的緩和政策を採ったが、日本の取り組みはそれほど大々的なものではなかった。
あるデータによると、過去5年間に、米連邦準備制度理事会(FRB)は基軸通貨の投入量を230%増やし、欧州中央銀行は85%増やしたが、日本は50%だった。
円相場は短期的に高騰したが、金融危機発生前の水準には戻っていない。
日本国内では、金融証券市場の指数が上昇したため、安倍首相の支持率が2カ月連続で上昇している。
だが安倍首相が推進する金融緩和政策の継続的な有効性について、経済界から疑問の声が多く挙がっている。
第一の疑問は、金融緩和の余地がどれくらいあるかというものだ。
円の金利は長期間ゼロに近い水準にあり、10年満期国債の金利は0.71%まで下がっている。
このため日銀が国債の購入を拡大して長期金利を低く抑え、貸出・投資を促進する政策を採っても、その効果は非常に限定的であることを意味している。
第二の疑問は、日本が金融緩和によってデフレの影から脱出できるかどうかというものだ。
日本は長期にわたりデフレの状態にあり、消費者は物価の低下に対しては心の準備ができている。
日本メディアの取材によると、最近は証券市場の取引に参入する人が多いが、スーパーマーケットでは値下げの対象となる商品の範囲がさらに広がっている。
安倍首相は企業に賃金上昇を呼びかけるが、企業側はこれに抵抗する。
収入が伸びなければ、消費が活性化することはない。
公共支出の拡大は「アベノミクス」の柱の一つだが、インフラが行き渡り、飽和状態にさえある先進国にとって、公共予算をどこで利用するかも難しい問題である。
このほか金融緩和と財政再建の間の矛盾、労働人口の減少といった構造的な問題も、日本経済の発展を長期的に制約するとみられる。
こうした矛盾を直接解決する方法は短期的には見いだせないとみられるが、安倍首相が構造改革への決意を固めなければ、その推進する金融緩和政策が経済に及ぼす影響は限定的なものにならざるを得ないだろう。
(提供/人民網日本語版・翻訳/KS・編集/TF)
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【中国海軍射撃用レーダー照射】
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